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さいたま市プール事故裁判⑩

さいたま市プール事故裁判⑩

 2017年さいたま市の保育施設のプールで園児の死亡事故が発生した刑事裁判の傍聴報告の第10回目です。この裁判は2月14日判決の言渡しが行われ結審いたしました。

 今回の判決の焦点はガイドライン(教育・保育施設等における事故防止及び 事故発生時の対応のためのガイドライン)公表後であることから、ガイドライン公表前であれば無罪であった園長が有罪になるのか?また、ガイドライン公表前であれば罰金50万円前後の罰を受けていた事故現場にいた職員の刑罰が重たくなるのか?です。言い換えると、刑事裁判において、ガイドラインを根拠に刑罰が重たくなるのか?という点が今回の判決の焦点です。

 結果からいうと、刑事裁判において、ガイドラインを根拠に刑罰は重たくなりました。元園長には禁固1年(執行猶予4年)、元職員には禁固1年(執行猶予3年)の刑罰が課されました。

 まずは、元園長ですが、以前であれば無罪であったものが有罪になりました。しかも、元職員より刑罰は重たいです。事故当時園内にいなかった元園長が有罪になり、かつ、現場にいた職員より刑罰が重たくなった理由は、ガイドラインに記載がある、監視に専念するものを配置すること。安全な体制が確保できないのであればプール活動を中止すべきであること。これらの体制を園内に導入していないこと(職員に指導していないこと)が根拠の一つにあげられていました。

 元職員の刑罰も罰金刑から禁固刑にかわりました。やはり、これもガイドライン公表後であるにも関わらず、ガイドライン記載事項を実行していない点が考慮されていました。ただし、この元職員はガイドラインの存在を園から教えてもらったことはない、ガイドラインの存在を知らなかったと供述しています。しかし、刑罰においてはこの点は一切考慮されませんでした。何の知識も与えず保育現場に職員を配置することは盾や鎧なしで戦場に立たせることと同じです。

 施設長は、ガイドライン記載事項の体制を園内に導入していなければ自身は有罪になり、職員は必要な知識を提供してもらえず有罪になる。という、前例ができてしまったのが今回の判決です。
ガイドラインが刑事裁判では、刑罰の根拠になることが明確になったわけですから、ガイドラインに記載されていることは、園の最低限の安全対策だと考え実行していってください。

2020.02.19