事故・トラブル最前線

事故・トラブル最前線これからの時代の園経営や
危機管理の在り方を専門家が語る

事件

元保育施設長に懲役10年

元保育施設長に懲役10年

 宇都宮市の認可外保育施設「託児室といず」で2014年7月、宿泊保育中だった当時9カ月の女児を、医師の適切な診察を受けさせず放置し、熱中症で死亡させたなどとして、保護責任者遺棄致死罪などに問われた元施設長で被告(59)の裁判員裁判の判決が15日、宇都宮地裁であった。

 佐藤裁判長は「危険かつ冷酷で悪質。保育士としての使命に反する」などと述べ、求刑通り懲役10年を言い渡した。

 裁判長は、当時の女児の容体について「水便が続き、38度を超える高熱を出すなど体調は明らかに異常で、予断を許さない状況にあったことは明らか」と指摘。「保護を要するとは思わなかった」とした弁護側主張を退け、「保護者の信頼を著しく裏切った刑事責任は非常に重い」と述べた。

 判決によると、被告は2014年7月、女児に発熱などの症状があるのを認識していたにもかかわらず放置し、熱中症で死亡させた。2013年4月には、別の幼児2人に毛布を巻き付け、ひもで縛る暴行を加えた。

 閉廷後、栃木県庁で記者会見した女児の父親は「娘に『無念を晴らすことができたよ』と報告したい。娘の死を無駄にしないためにも、保育施設の抜き打ち検査などについて訴えていきたい」と語った。(2014年6月15日 時事通信)

 認可外保育施設とはいえ、施設長に下された重い刑事責任です。これが人の命を預かる仕事に課せられた実物大の責任なのでしょう。

 保育は密室で行われているため、利用者と施設側の人間の信頼関係が大前提だと思います。しかし、それゆえに施設側は事例のように保護者を欺くような保育をすることも可能です。だからこそ、欺いてはならないのですが、そこは施設長や保育従事者の倫理観にゆだねられるので、目で確認することはできません。

 危機対応の現場で、しばしば見受けられるのですが、ミスを隠したり、取り繕ったりする人物は、普段からそういう傾向があります。日常の小さなミス、たとえば遅刻したり、提出物を忘れたりしたときに、言い訳したり、取り繕ったりする人物は危険な因子を持っています。そして、それは大きなトラブルを招きかねません。

 施設内で大きな事故を起こさないためにも、起こった事故を大きなトラブルに発展させないためにも、日ごろから自分に厳しい倫理観を持たせるような人材育成が重要だと考えます。

 

2016.06.24