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行政が安全のためにできること

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しつけと称し園児たたく 都が認可外保育施設に改善勧告

 東京都は12日、施設長が「しつけ」と称して園児をたたくなど、不適切な保育をしていたとして、葛飾区の認可外保育施設「にじいろ保育園」に同日までに改善勧告を出したと発表した。

 都は今年2月、施設に特別立ち入り調査を実施。施設長が園児のおしりや顔をたたく、食事を無理やり食べさせるなどの行為を繰り返していたことが確認された。

 調査に対し、施設長は「言うことを聞かないから、しつけとしてたたいてしまった」と話し、今後も施設長を続ける意向を示している。

 都は適切な保育をしていないと判断しており、今後、児童福祉審議会の意見を聞いた上で、事業停止などを命じる方針という。(2019年3月12日 共同通信)

 今回の事例のようなことは、すごく大切なことだと思います。私どもは、いつも保育施設利用者の方々に「保育施設はブラックボックス」だとお伝えしています。子どもを預けている間、保育施設内ではどのように子どもと接しているのかは、内部の人間しかわかりません。

 おそらく事例のケースでも内部告発によって、園長の「しつけ」と称して園児に暴力を振るっていたことが明るみに出たのではないかと考えられます。逆に考えれば、内部告発が行われなければ、いつまでもブラックボックスの中ということになっているわけです。

 このような園は、今年の10月に実施される幼児教育・保育の無償化に向けて、見境なく増やされる保育施設の中にある一定数出てくるでしょう。

 そのような状況が考えられる中、行政ができることは何なのでしょうか。

 特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業の運営に関する基準の第5条(内容及び手続きの説明及び同意)には、「特定教育・保育事業者は、利用の申込を行った保護者に対し、教育・保育の選択に資する重要事項説明をし、利用申込者の同意を得なければならない」と定められています。

 この条文は、施設側から重要事項説明を受けて、同意した上で、施設利用を決めた保護者は、すでに説明された内容に関しては自己責任を負うという側面もあると思います。

 条文の中にある「資する」とは、役立つという意味です。つまり、保育施設の選択に役立つ情報を施設利用開始前に開示し、あとは、利用者の自己責任において選択してもらいましょう。ということなのです。

 ここでの重要事項説明には含まれていませんが、行政が監査等で知りえた不適切な保育(虐待や暴力行為など)が行われていた施設は、事例のようにどんどん実名公表していくべきだと思います。

 事例のように園長が園児に暴力行為を行っていたのに、即日、事業停止を行わないのであれば、施設利用者に事実を開示し、利用者の意思によって施設利用を辞める決断をしていただくことしか、子どもたちを守るすべはないと思います。

 子どもが犠牲になる前に、マイナス情報こそ早めに開示する仕組みがいち早く整うことを期待しています。

2019.03.22