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事故

保育施設での死亡事故率そんなに高いか?

保育施設での死亡事故率そんなに高いか?

 5月1日の朝日新聞ネット記事「認可保育所、安心じゃない? 次々開設、各地で問題発覚」では、認可保育所で問題が起きていることを報じていました。

 その記事に対し、ある社会保障関係のNPO法人理事長が「そんなにしても、こんな記事見直しや記事内容では、子どもを預ける親たちの不安が徒らに煽られるだけではないかと思う。問題が発覚したことを報じるのは悪くないが、保育施設の利用者数に占める事故率くらいは試算しておくべきだ。」と論じています。

 そして、当人なりに計算して、認可保育所で0.0002%、認可外保育施設で0.006%となり、全体では0.0007%となる。とし、これは高いと感じるか、低いと感じるかは、人それぞれだろう。とまとめているネットニュースがありました。

 長年保育現場で発生した事故に携わってきた会社としては、死亡事故の発生率も10年前に計算しましたし、そのときの発生確率も今回のNPO法人理事長が計算したものと同じようなものでした。

 保育現場の死亡事故については、発生確率が問題ではありません。例えば、保育の現場で自分の子どもを事故で亡くした保護者が園長に対し、「保育現場での死亡事故発生確率は0.0007%ですから、この園も安全だと思っていました。」とは言わないでしょう。保育現場の死亡事故統計は0でなければ、意味がないので、確立を論じること自体ムダです。

 それよりも保育現場の死亡事故原因の方が問題でしょう。園児の死亡原因は①睡眠中の事故、②水の中(プールや川など)の事故、③誤嚥事故の3つにほぼ集約されます。発生原因がわかりきっているのに、毎年、同じ原因の死亡事故が発生することの方が大問題なのです。なぜなら、原因がわかっているものには、対策が打てるからです。つまり、同じ原因の死亡事故が毎年発生するということは、全国の保育施設が事故原因の特定をしておらず、対策も講じていないことの証明になっているということなのです。

 事故対策は、優先順位ときちんと効果が確認される対策を講じることが最重要なのです。

2016.05.13