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事故

「保育施設でのうつぶせ寝禁止を」 死亡男児の両親が訴え

「保育施設でのうつぶせ寝禁止を」 死亡男児の両親が訴え

 東京都中央区の認可外保育施設で今年3月、うつぶせに寝かされた1歳2カ月の男児が死亡した事故で、千葉県在住の両親が29日、都庁で記者会見し、都が設置した検証委員会に対し、保育施設でのうつぶせ寝の禁止を求める意見書を提出したと明らかにした。

 父親(37)は会見で「大切な宝物だったのに、なぜうつぶせ寝にされてしまったのか。検証委で調べてほしい」と述べた。母親(38)によると、死亡は保育開始19日目だったといい、「泣いているのに抱っこもせず、(就寝中の)呼吸確認もしていなかった」として、都による保育施設の抜き打ち調査の必要性を訴えた。

 保育施設で重大事故が起きた場合、国は自治体に検証を求めており、都は5月、有識者による検証委を設置。検証委は年内に再発防止策を盛り込んだ提言をまとめる。

 都によると、事故があったのは事業所内保育施設「キッズスクウェア日本橋室町」。男児は約2時間半、うつぶせで寝かされて心肺停止になり、搬送先の病院で死亡が確認された。職員はその間、様子を十分に確認していなかった。(2016年6月29日 産経新聞)

 私どもアイギスのオフィスは日本橋蛎殻町にあり、今回のブログで取り上げた事故が起きた日本橋室町までは自転車で5分くらいの距離です。そういうこともあり、この事故の経過は興味深く見ています。

 さて、今現在、内閣府のHP内にある<子ども・子育て本部>のページでは、~従業員のための保育園をつくりませんか?企業のニーズに応じた保育が可能です。【企業主導型保育事業】で設置・運営の費用を助成します。~という見出しが大きく前面に出ています。

 今回の事故が起きたのも複数企業向けの事業所内保育施設でした。現在、首都圏では働く町だったところが住む町へと変貌を遂げ、本来、保育ニーズがなかったところに新たにニーズが生まれています。東京都中央区日本橋もそのような町のひとつなのですが、そういった町の待機児童を減らすには、【企業主導型保育事業】という形態は有効だと思います。しかしながら、施設の数だけ増やしても中身が伴わないのは問題です。特に安全対策が十分ではない施設を増やしても意味がないのではないでしょうか。

 うつぶせ寝による死亡事故は、保育施設内で発生する事故の中でも数少ない、ほぼ100%予防できる事故です。園児が寝ているときにうつぶせか、仰向けかは見ればわかりますし、うつぶせになっていれば、仰向けにすればうつぶせ寝による死亡に対する予防策は万全です。(※うつぶせが原因で死亡する可能性はゼロになりますが、その他の要因は排除できていません)

 今回の事例の中で死亡した園児は、うつぶせの状態で2時間以上寝かされ、発見前の50分間は呼吸確認などが行われていなかったそうです。これでは予防できないでしょう。見ていればできる予防策も職員が見ていなければできません。つまり当該施設では、単純な予防策も実行できないくらいの人員配置だったか、そもそも保育がずさんだったというところに原因があると考えられます。

 当該施設を紹介したHPには、以下のように記載があります。

 施設特徴

 ●ハード、ソフト共に「安全」・「安心」を追求した先進的施設。

 ●モニターによる確認と指静脈認証によるダブルチェック。最高レベルのセキュリティーに配慮した施設。

 (以下省略)

 このようにHPには書けますが、実態は記載内容とかけ離れているということは、よくある話です。人の安全は人が守ります。どれだけ施設や設備を先進的にしても、職員の安全管理能力のレベルを引き上げなければ、大きな事故は発生してしまいます。そこだけは、どれだけ時代が進んでも変わらないと思います。理にかなった安全対策を各施設で実施し、死亡事故などが発生しないように務めてください。

2016.07.01