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無認可保育施設で男児死亡

無認可保育施設で男児死亡

認可外保育施設で11カ月男児死亡 千葉県が改善勧告

 千葉県は2日、君津市の認可外保育施設「ゆいまーる」で7月、預けられていた生後11カ月の男児が死亡した、と発表した。県は施設の体制について、国の指導監督基準を満たしていない点があったとして、8月29日に改善勧告をした。

 県によると、7月17日午後2時ごろ、施設長で保育士の男性(40)が男児にミルクを飲ませて布団で昼寝をさせた。同4時45分ごろ、男児が嘔吐をしてぐったりとしているのに気づいた。救急搬送されたが、死亡が確認された。司法解剖したが死因は分からなかった。男児は仰向けで寝ていたという。

 同施設の保育士は施設長の男性1人のみで、補助者が3人。国の指導監督基準では保育従事者は2人以上が必要だが、当時は男性1人で死亡した男児を含め2人の子どもをみていた。

 同施設は2011、12、15年度の3回、基準を満たしていないとして、県から指導を受けていた。男児死亡後の立ち入り調査でも1人で保育する時間が確認されたため、県が勧誘を行った。県は、第三者検証委員会を設置し、施設の対応や改善策を検討する。(2016年9月2日 朝日新聞デジタル)

 0歳児が睡眠中に意識不明になり、司法解剖しても原因不明というのは子どもを預かる施設で起こる典型的な死亡事故です。死亡原因が不明の場合、施設側が園児の見守りに問題がなかったことを保護者に説明しなければなりません。そのために、見守りの記録が必要になるのです。

 2011年に発生した東日本大震災で福島第一原発が爆発してから、国内の原子力発電所はすべて止まりました。そして、現在、新たな安全基準をクリアした原発から再始動しています。事例の保育施設は、県から3回、基準を満たしていないと指導を受けています。これが原子力発電所ならば、再始動許可は出ていないでしょう。つまり、安全基準を下回っている発電所は稼動させてはいけないのです。

 この原則は危機管理上、当たり前のことです。しかしながら、保育施設の場合、指導する事実が存在していても施設が閉鎖されることはありません。最悪の場合、死亡事故が発生するまで基準に違反していることすら知らされないのです。

 安全は保育の「質」ではありません。最低限、超えておかなければならないものなのです。質であれば、高いものもあれば、低いものもあり、そのどちらを選択するかは、利用者が決めればいいことです。でも、現行の保育制度では、利用者が選択することはできません。それゆえ、どこの施設に入ったとしても、安全に関しては差があってはならないのです。それが実現するためにも行政の役割に期待しています。

2016.09.09