事故・トラブル最前線

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事故

また、新たな裁判の始まりです。

また、新たな裁判の始まりです。

プール事故訴訟、保育園側争う姿勢 京都地裁

 京都市上京区の保育園「せいしん幼児園」で2014年夏、プール活動をしていた男児(当時4)が死亡した事故で、両親ら遺族が、同園を運営する社会福祉法人「正親福祉会」(上京区)に約4200万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が15日、京都地裁であり、被告側は答弁書で請求棄却を求めた。

 訴状では、保育士2人は数分間プールから離れるなど不十分な監視を行い、当該男児を溺水させたとし、同会に使用者責任があると主張している。

 答弁書で被告側は「死亡原因は状況から見て、給食で食べて未消化だったパンや牛乳を誤えんし、窒息してプールに倒れたためだ」とし、「教員に誤えんを即座に発見する注意義務は負わせられない。プールに浮いた状態を発見するまでの時間も長くない」と、争う姿勢を示した。

 園児の父で原告(45)は「なぜ4歳でなくならなければならなかったのか、あの日に何が起こったのかを真剣に考える裁判であってほしい」と意見陳述した。(2016年9月15日 京都新聞)

 この事案は、刑事責任の面では、両親が業務上過失致死容疑で告訴していた当時の園長ら4人が2016年2月に嫌疑不十分で不起訴処分になっています。そして今年の7月京都第2検察審査会が「不起訴不当」と議決しています。

 さて、今回は民事責任を問う裁判が始まったという記事です。新制度の運営基準を定めた内閣府令39号(平成26年)の第32条第4項では、「特定教育・保育施設は、支給認定子どもに対する特定教育・保育の提供により賠償すべき事故が発生した場合は、損害賠償を速やかに行わなければならない」と定められています。

 通常であれば、保育時間中に発生したプールでの死亡事故は、保険会社に申請し、被害園児の遺族と交渉をして示談します。しかし、今回は示談ではなく、裁判になっており、保育園側は争う姿勢を示しています。

 園側としては、当該プール事故は、賠償すべき義務がなかったというところで、争いたいのだと思います。そもそも、園側が当初から争う意思がなければ、裁判を経ずに示談しているでしょう。

 これまでの園内で発生したプール事故で、民事責任が免れた事例はほとんどありません。さらに、京都市が事故後行った特別監査では、園側に原因があったと結論づけられています。にもかかわらず、この園は争う姿勢を示しています。もしかしたら、事故の全容が違っているのかもしれません。今後の裁判の行方を興味深く見守りたいと思います。

2016.09.23