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事故防止態勢の主役は職員です!

事故防止態勢の主役は職員です!

那須塩原市、プール事故受け全公立保育園にカメラ設置 栃木

 那須塩原市は、市内の全公立保育園11園にビデオカメラを設置して、園内の安全管理態勢を強化するとともに、民間保育施設には設置費用を助成する方針を決め、21日の市議会全員協議会で明らかにした。今年7月、市内の認定こども園のプールで遊んでいた女児が溺れ、一時意識不明になった事故を受け、保育中の事故防止や事故後の検証につなげる狙いがある。

 公立保育園は食事や昼寝する部屋、プールなど各園に6~10台を設置し、11園で計81台となる予定。民間施設は保育園・認定こども園が上限40万円、小規模保育(定員6~19人)などの地域型保育施設が同20万円とし、設置費用の半額を補助。公立保育園の設置費864万円と民間保育施設への補助900万円は9月補正予算案に盛り込まれ、9月議会最終日の23日に追加提案される。

 このほか、保育施設や小学校などで6月末~7月に発生した侵入未遂事件や窃盗未遂事件などを受け、公立保育園と公設民営放課後児童クラブの夜間や休日の防犯策として、10月から警備態勢を強化することも市議会全員協議会で報告された。(2016年9月22日 産経新聞)

 危機管理の世界で10年以上生きてきた私は、「人の命は人が守る」ということを大前提にしています。事例では、プール事故を受けて、ビデオカメラの設置を決めています。市の目論見通りに事故後の検証には、大いに役立つと思います。しかし、事故防止の面ではビデオカメラ単体では役に立たないでしょう。

 道具は人が使います。ビデオカメラを設置した場合の事故防止としては、そのカメラを通じて映し出す映像を誰かが必ず見ていて、画面上で異常が発見された場合に、園内に異常シグナルを発し、現場の職員は異常状態のものを正常に戻す行動を取らなければなりません。

 入所者19名が殺された相模原の知的障害者施設にも16台のビデオカメラが設置されていたと報道されています。しかしながら、常時監視されていたわけでもなく、緊急時に外部に通報するシステムもついていませんでした。さらに、警備員は仮眠中で事件発生に気づきませんでした。いづれにしても、不審者の発見は事前にできませんでした。結果からすると16台のカメラはムダだったわけです。

 もちろん、16台分の映像を1人の職員が常時監視していれば、16人分の視覚情報を1人で得ていることになりますから、効果は絶大です。しかし、カメラはつけました。常時監視はしていません。異常を発見したときの手順の決まっていませんでは、事故防止の仕組みとしては機能しません。

 現在の保育園で常時カメラの監視に人を1人割くのは、ギリギリの人数で現場を回している以上、難しいでしょう。何か特別な工夫をしなければ、カメラを使った事故防止機能は完成しません。ムリ、ムダ、ムラを排除し、事故防止のストーリーとしても完結させなければならないのです。

 ビデオカメラを設置したから、事故防止ができているという考えを捨てることから、カメラを使った事故防止プログラムの構築は始まると認識した方が良いと思います。

2016.10.21