さいたま市プール事故裁判③
2017年さいたま市の保育施設のプールで園児の死亡事故が発生した刑事裁判の傍聴報告の第3回目です。
今回の事故で検察官が主張した、元園長の過失(不注意)は、「指導する職員と監視する職員を分けるなど、園児の動静を把握し、何かあれば速やかに園児を救助する体制を作らなかったこと。このような体制を作ることができないのであればプールの中止を決定すべきなのにこれをしなかったこと。」です。
検察官は元園長に2つの過失があったと主張しています。
1つ目は「指導する職員と監視する職員を分けるなど、園児の動静を把握し、何かあれば速やかに園児を救助する体制を作らなかったこと」です。園児の動静を把握し、何かあれば速やかに園児を救助する体制を作らなかったことを元園長の過失ととらえているわけです。そして、このような体制の具体例として、園児を指導する職員と園児を監視する職員を分けることをあげています。園児を監視する職員と園児を指導する職員を分けるとは、つまり、プール活動中に園児を監視する職員は園児の監視に専念し、指導業務をしてはならないことを指しています。このことから、元園長の1つ目の過失は「監視者は監視に専念するという体制を作らなかったこと」ということができます。
2つ目は「このような体制を作ることができないのであればプールの中止を決定すべきなのにこれをしなかったこと」です。これは、その日の人員等により監視者が監視に専念できないのであれば、プール活動を中止するという選択をすべきだったのに、プール活動を中止しなかったことを過失ととらえているといえます。
さて、ここで内閣府から公表されているガイドライン(教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン)の「プール活動・水遊びの際に注意すべきポイント」を見てみましょう。
① 監視者は監視に専念する。
② 監視エリア全域をくまなく監視する。
③ 動かない子どもや不自然な動きをしている子どもを見つける。
④ 規則的に目線を動かしながら監視する。
⑤ 十分な監視体制の確保ができない場合については、プール活動の中止も選択肢とする。
⑥ 時間的余裕をもってプール活動を行う。
おわかりでしょうか?検察が主張している元園長の過失は①監視者は監視に専念する。⑤十分な監視体制の確保ができない場合については、プール活動の中止も選択肢とする。の2点をあげているだけなのです。つまり、検察官は元園長がガイドラインに反したプール活動を行ったことを過失ととらえているわけです。
弊社では、再三ガイドラインの重要性を伝えてまいりました。また、ガイドラインをベースにしたマニュアルの作成もしてまいりました。それは、ガイドライン違反はそのまま刑事裁判の過失ととらえられてしまうと考えていたからです。それが、今回の裁判ではっきりと証明されてしまったわけです。みなさまも、再度、ガイドラインを見直してみてください。
次回のブログでは職員の過失について掘り下げていきます。