さいたま市プール事故裁判⑥
2017年さいたま市の保育施設のプールで園児の死亡事故が発生した刑事裁判の傍聴報告の第6回目です。遺族感情について報告いたします。
刑事裁判において被害者感情は判決(裁判所の判断)に大きな影響を与えます。例えば、窃盗被害にあった被害者が、加害者から被害額を返還され国家権力による刑事罰を求めないという被害者感情を裁判所に報告した場合、被害者が許しているならば、あえて刑事罰を科す必要はないだろう、または、本来より軽めの刑で十分だろうと裁判所は判断してくれます。
今回の裁判の被害者は自分の子どもを亡くしてしまっているため、遺族です。そのため、被害者感情ではなく遺族感情がどのようなものかは判決に大きく影響を与えます。
今回検察官が裁判で主張した遺族感情は以下のようなものです。
起訴されている職員から面会の申し出があったのは、事故から1年たってからで、面会しても泣いてばかりで誠意がみえない。職員は死を背負ってくと言っていたけれども具体的に何をやるのかわからない。
時間がたてば自分の感情が落ち着くと思っていたけれども、時間が経てば経つほど喪失感が大きくなる。亡くした子どもと同じくらいの子どもを見ると、自分の子どもが成長していればこれくらいなんだろうな、と考えてしまい辛い。
保育士が忙しいのはわかっているけれども、最低限のことはやってほしい。できるだけ重たく処罰して欲しい。
この遺族感情からわかることは、やりきれない遺族の気持ちと園側を一切許していないということです。また、起訴されている職員は面会しての謝罪を事故後1年間していなかったということです。
もしかしたら、この職員は今回の事故が発生した後すぐに遺族のご自宅に行って謝罪を申し入れたかもしれません。その時、遺族から顔も見たくないと追い返されたかもしれません。それでも、園および職員は遺族の様子を伺いながら謝罪し、真摯に反省している姿を遺族に見せる必要がありました。それにもかかわらず、1年間遺族の方とのコンタクトをしていなかったことがわかります。事故から1年間面会の申し出が無かったことが遺族感情をより悪化させてしまったのです。
事故・トラブル発生後の謝罪の重要性は弊社が繰り返し伝えていることです。謝罪の重要性は事故・トラブルの大小に関係ありません。謝罪の重要性を再確認してください。
次回は、元園長・職員の弁護士の今後の弁護方針について報告いたします。