さいたま市プール事故裁判⑧
2017年さいたま市の保育施設のプールで園児の死亡事故が発生した刑事裁判の傍聴報告の第8回目です。
この事故の刑事裁判は、11月21日に第2回公判が埼玉地方裁判所で行われました。第2回公判は弁護士が証拠調べを申請した情状証人(被告人の量刑を定めるにあたって酌むべき事情を述べるために公判廷に出廷する証人)の尋問と被告人本人に対する質問、検察官の論告求刑、遺族の代理人弁護士による意見陳述が行われ予定でした。これらのことが終了すれば裁判は結審し、判決を待つのみとなります。
検察官の論告求刑とは、事件のあらましと被告人の犯した罪をまとめて訴え、その後、裁判官に対して、「被告人には、懲役○○年を求刑します」と、被告人に下されるべき罰を陳述します。ここで、初めて検察官が今回の事故に関して、被告人に求める罰が明らかになります。この論告求刑を聞きたくて第2回公判では記者の方が入れ替わり立ち代り傍聴席を出入りいたしました。
結果を言ってしまうと、第2回公判では情状証人に対する尋問と、被告人質問が終わった段階で開廷から3時間30分が経過し、裁判所の開庁時間を経過してしまったため終了となってしまいました。そのため、記者の求めている論告求刑などは次回1月9日に持ち越しとなってしまいました。
証人尋問や被告人質問を聞いていていると今回の事故が具体的に想像でき身をつまされる思いになります。しかし、このこととは別に1つ大きな点に気がつきます。証人尋問にしても被告人質問にしても、証人や被告人が弁護士、検察官、裁判官の質問に答える形式をとります。しかし、証人も被告人も聞かれている質問に答えるのではなく、自分が話したいことを話してしまい裁判官から回答を遮られる場面が多数ありました。つまり、聞かれていることに答えるということができていないのです。そのため、時間が大幅に超過してしまったのです。
裁判という場面で聞かれていることに答えないのであれば、公判の回数を増やせば事足ります。しかし、実際の事故現場で、園長先生に事態を報告するとき、救急隊員に事態を報告するときに、聞かれていることに答えず自分の話したいこと(多くは言い訳になります)を話していては、貴重な救命の時間を消費してしまいます。
聞かれていることに聞かれている範囲で答えるということは危機対応上も重要なスキルです。しかし、聞かれていることに、聞かれている範囲で答えることは思っている以上に難しいことです。そのため、日常生活から聞かれていることに答えるということを意識してみてください。また、管理職の方は職員が聞いていること以外のことを答えている場合は指摘する習慣を付けるようにしてみてください。