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事故

裁判所も意識している保育施設の虐待

裁判所も意識している保育施設の虐待

 宇都宮市内の認可外保育施設で2014年7月、宿泊保育中の女児(当時9カ月)が死亡した事件で、両親が宇都宮市の指導監督責任などを問い、宇都宮市などに損害賠償を求めた訴訟の判決が今月3日、宇都宮地裁でありました。裁判長は、市が事件前の虐待通報を受け、事前通告なしの立ち入り調査を行わなかったことなどについて、違法性と過失を認定し、「市の注意義務違反と死亡との間に因果関係が認められる」とし、被告側に計約6300万円の支払いを命じました。宇都宮市はこの判決を不服とし、すでに控訴しています。

 この女児の死因は熱中症です。14回もの水様便があった上、38.1℃の熱があり、唇が乾燥し、ぐったりするなど明らかな脱水症状があったにもかかわらず、園は病院に連れて行くなどの適切な対応をとらなかったとのことです。さらに、この間、大人用のワイシャツなどでグルグル巻きにして動けないようにしていたことも判明しています。大人用のワイシャツなどでグルグル巻きにするという行為を他の園児にも行っていました。刑事事件はすでに終了しており、この認可意外保育施設の経営者は保護責任者遺棄致死罪の罪で懲役10年の罰に服しています。

 上記宇都宮地裁の判断について法律的には、公立の保育施設以外であっても、市の賠償責任を認めた点など注目すべき点があります。しかし、宇都宮地裁のこの判断は、宇都宮市が虐待行為を見過ごしてしまったことに対する社会の目を重く評価したのではないかと思います。

 あまり、大きな声では言えませんが、裁判所も判断の結果の妥当性を求められます。そのため、結論ありきで法律論は後付という場合もでてきてしまうのです。

 社会の目が虐待に厳しくなっているのは、虐待の報道のされ方や児童虐待防止法の改正からも明らかです。

 宇都宮市のこの認可外施設で行われていたことは明らかな虐待ですが、今後クローズアップされる虐待は、園内では教育・指導だと思っていることが、園外からみると行き過ぎた教育・指導であり虐待だ、と判断されてしまうケースです。

 園内での園児に対する教育・指導が許されないわけではありません。しっかりと保護者の方に理解していただける教育・指導であるかを考えながら保育にあたってみてください。そして、事前に園での教育・指導について保護者に説明しておくことも有益だと思います。

2020.07.01