インシデントとは?
園児降ろし忘れ「確認怠った」
保育園の送迎バスから2歳の園児を降ろし忘れたとして、福岡県久留米市が謝罪しました。
久留米市によりますと、先月20日の夕方、市内の保育園の駐車場に止まった送迎バスから保育士らが園児を降ろす際、2歳の男の子がそのまま10分の間車内に取り残されました。
熱中症の症状など園児の健康状態に問題はないということです。
バスを運営する久留米市は、「保育士や運転手が確認を怠っていた。改善指導を徹底したい」と話しています。(2020年9月4日 RKB)
このような事故が起きた場合、園内に残される記録は事故記録ではなく、インシデントレポートあるいはヒヤリハットレポートでしょう。
これは、バスの車内に取り残された園児に何もケガや病気がなかったから事故記録ではなく、インシデントになるわけです。
ここでの記録の残し方に特に問題はありません。本質的な問題はここにはないので、記録の分別にこだわる必要はありません。分別が正しくても事故を防止することはできませんから。
問題は、私ども専門家から見ると、この事故は死亡事故と同様に対応しておかなければならないということです。
おそらく、行政は今後は仕組みなどを作ることによって、再発を防止するようにというフワッとした改善指導をするに留まるでしょう。そして、その対策では再発防止することはできません。
保育施設の管理下から一瞬でも園児がいなくなるということは、死亡事故にならないのは単に運が良かったということなので、死亡事故と同等に扱うべきです。
そもそもこのパターンの事故の原因は「人数確認」のやり方にあります。人数確認は何のためにやるのかという目的を明確にして職員全員に周知徹底しなければ機能しません。
人数確認の目的は、「園児がそろっていることを確認すること(A)」です。でも、職員の大半は、「園児がいなくなっていることを発見するため(B)」にしているのだと思います。
この2つの違いは、Bでは「園児は全員いるだろう。いなくなっている園児はいないだろう」という油断が生じます。しかし、Aでは、それがありません。
なぜなら、そろっていることを確認しなければならないということは、園児の名前や顔と人数を確認したことによる根拠を持っていなければ、そろっていることの確認はできていないということだからです。
この簡単な違いで事故は発生したり、発生しなかったりします。
事故防止策は原因を特定し、意味のある再発防止策を講じていなければ機能しません。
「気をつけましょう」「努力しています」などは事故の前では無意味です。効果的な対策を最低限行い、保育に集中できる体制を作ることが重要なのです。