繰り返されるガイドライン違反
大阪市城東区の認可保育園で2020年2月、昼食中に男児(当時1歳2カ月)が食べ物を喉に詰まらせて死亡した事故を巡り、有識者でつくる市の検証部会は14日、誤嚥(ごえん)防止の配慮が不十分だったとする報告書をまとめた。 【毎日新聞1月15日】
お亡くなりになられた、園児のご冥福を心からお祈りいたします。
尊い命が保育施設で奪われてしまいました。お亡くなりになった園児の命は何をしても戻ってきません。保育業界に携わる者は同じような事故を繰り返さないようにすることしかできません。
大阪市の報告書によると、男児は2020年2月12日午前11時半ごろ、保育士が給食のりんごとハンバーグを与えた際に泣いて体をのけぞらせ、食べ物を喉に詰まらせたとのことです。
また事故の要因を下記のようにしています。
Ⅰ、直接的な要因
・口に食べ物が入っている状態で泣き出した
・泣きながら体を斜めにのけぞらせた
Ⅱ、Ⅰにつながったと思われる要因
① りんごが苦手で食べるのを嫌がっていたが何とか食べてほしいと思い、口の中にりんごが残っている状態で次の食べ物を入れた
② りんごが約2センチの厚みのくし切りで提供されていた(子どもが食べやすいようにその場で小さくしながら、食べさせていた)
Ⅲ、Ⅱにつながったと思われる要因
ア 給食は「全量食べきる」「時間内に食べきる」ということが、0 歳児を含むすべてのクラスで定着していた
イ 事故当時、0歳児クラスにはお茶の提供がなかった
ウ 離乳食から普通食に移行するプロセスに課題があった
「Ⅰ、直接的な要因」は、園児がりんごを喉に詰まらせてしまった状況の説明になるので、具体的な事故の要因は「Ⅱ、Ⅰにつながったと思われる要因」「Ⅲ、Ⅱにつながったと思われる要因」になります。
ここで弊社が再三指摘している内閣府から公表されている『教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン』(以下、単に「ガイドライン」という)の食事を介助する際に注意すべきポイントを見てみましょう。
・ゆっくり落ち着いて食べることができるよう子どもの意志に合ったタイミングで与える。
・ 子どもの口に合った量で与える(一回で多くの量を詰めすぎない)。
・ 食べ物を飲み込んだことを確認する(口の中に残っていないか注意する)。
・ 汁物などの水分を適切に与える。
・ 食事の提供中に驚かせない。
・ 食事中に眠くなっていないか注意する。
・ 正しく座っているか注意する。
いかがでしょうか?ガイドライン記載事項を守っていれば防ぐことができた事故だということがお分かりになりましたでしょうか?
ガイドラインでは、「ゆっくり落ち着いて食べることができるよう子どもの意志に合ったタイミングで与える。」「子どもの口に合った量で与える(一回で多くの量を詰めすぎない)。」「食べ物を飲み込んだことを確認する(口の中に残っていないか注意する)。」と、園や職員の都合ではなく、園児の都合に合わせた食事の介助の必要性が記されています。
それにもかかわらず、今回の事故が起きてしまった園では、口の中にりんごが残っている状態で次の食べ物を入れ、給食は「全量食べきる」「時間内に食べきる」という園や職員の都合を園児に押し付けてしまったわけです。
国が死亡事故を含む重大事故が起きやすい5つの場面として、睡眠中、プール活動・水遊び、誤嚥(食事中)、誤嚥(玩具、小物等)、食物アレルギーをあげ、具体的に取り組むべき行動をガイドラインで2016年に公表しています。それにも関わらず、今回の事故が起きてしまった園は、事故当時、誤嚥事故防止のためのマニュアルは無かったとのことです。後何回、ガイドライン違反の死亡事故が起きればガイドラインが順守されるのでしょうか?
国が発表している安全のルールであるガイドラインをしっかりと園内に導入し、ガイドライン違反の死亡事故を減らす取組は必ずしてください。
弊社においても、ガイドラインを園に導入するために協力できることがありますので、いつでもお問い合わせください。