誤嚥事故
新潟県佐渡市の市立小学校で、5年生の男児が給食中にパンをのどに詰まらせて重体となっていた事故で、同市教育委員会は11日、男児が同日死亡したと発表した。市教委が原因を調べ県や国に報告する。
市教委によると、7日午後0時25分ごろ、給食中に児童が米粉パンをのどに詰まらせた。教室には児童21人と担任教師1人がいた。給食は同0時20分に始まり、同40分までの予定だった。児童はそれぞれの机で前を向いて食べるよう指導され、死亡した男児がどのようにパンを食べていたかは、見ていた児童がいないため分からないという。パンは楕円(だえん)形で長さ約12センチ、厚さ約4センチ。半分ほど残っていた。
異変に気付いた教師が、男児の背中をたたいたり、腹部を突き上げたりしてはかせようとした。男児は少しはき出したが、まもなく気を失った。救急車が到着するまで養護教諭が心肺蘇生を試みたが、意識は戻らなかったという。
【2021年7月11日朝日新聞】
安心安全であるべき教育の場で1人の尊い命が犠牲になりました。謹んでお悔やみ申し上げます。
保育・教育の現場では同じ事故を繰り返さないために、なぜこのような事故が起きたかを分析しなければなりません。現状において公表されている事実が限られていますが、この報道内容からでも私が気になる点は2点あります。
1点目は、行政が誤嚥しやすいものとして指摘している、ミニトマトや白玉風団子、ナッツ、ブドウ等以外の食材が誤嚥の原因になっている点です。危機管理ではリスクの固定化とうい言葉があります。誤嚥事故で言うのであれば、ミニトマトや白玉風団子等が誤嚥しやすいと行政から指示があると、自分の中でそれ以外の食材に関しては誤嚥の可能性はないと考えてしまうことです。これは非常に危険な考え方です。口に入る食材であれば何でも誤嚥の可能性はあります。ミニトマト等を4つに切っても誤嚥の可能性はゼロにはなりません。食べ物を誤嚥をする原因は食材のサイズだけではなく、口の中の水分量が少なくなることも1つの原因です。誤嚥の原因を知っていれば食材にとらわれることなく、誤嚥リスクについて考えることができます。パンは口の中の水分を奪い去ります。どのような食材に誤嚥リスクがあるのかではなく、なぜ誤嚥が起きるのかの原因まで遡らなければ誤嚥事故を防ぐことはできません。
2点目は、報道からははっきりわかりませんが、誤嚥が発生した後、担任の先生は男児の背中をたたいたり、腹部を突き上げたりしていますが、どのタイミングで119番通報をしたかです。男児の背中をたたいてもなかなかパンを吐き出さず、自分では対応できないと考えて慌てて119番通報していたのであれば危機対応の失敗です。誤嚥は気道を塞ぎます。つまり、呼吸ができないわけです。1秒でも早く救急救命の専門家(救急隊)を呼ばなければなりません。(保育現場で働いているみなさまは、救急救命の専門家ではありません。仮に救急救命の研修を受けていたとしても)であれば、誤嚥に気がついた段階ですぐに隣のクリスの担任の先生等に協力を求めいち早く119番通報しなければならなかったのです。
我々からみると今回の事故に関しても、以前と同じような場面で同じようなミスが発生し尊い子どもの命が奪われてしまったと感じてしまいます。いつまで同じ事故を繰り返せば、防げる事故を防ぐことができるのでしょうか。