ルールの外にあるもの
「飲酒する医師だと知っていれば預けなかった」乳児の父親会見
豊橋市の産婦人科の男性院長(68)が飲酒後に出産手術をしていた問題で、生まれた乳児の40代の父親が5日、名古屋市内で記者会見し、「当日勤務すると分かっていながら飲酒する医師だと知っていれば、妻や子どもは預けなかった」と怒りの声を上げた。
父親によると、生まれた乳児は頭部に血がたまり、肺や心機能が低下。近隣の別の病院に緊急搬送され、一時生命の危機があった。飲酒が手術に影響を与えたかは不明だが、20代の母親は院長の対応などにショックを受け、一時幻聴や不眠などに悩まされたという。父親は「院長は大事な出産があることが分かったうえで飲酒し、悪びれもせず、謝罪すらしていない」と憤った。
飲酒後の医療行為について、厚労省は医事課によると、法規制の議論はされていないといい「職業倫理に近いもので、業界の中でどう考えるかの問題。他の職業や資格でも、勤務が分かっていて飲酒することをわざわざ禁止していない」との見解を示す。
こうした現状に、父親は会見で「医師倫理に任せるのではあまりにずさん。法律で規制できないなら、条例など他の方法で子どもや母親が安心できる枠組みを作ってほしい」と訴えた。(2021年8月5日 毎日新聞)
上記の事故は私も人の親として憤りを覚えるものです。この事故の特徴は、法律やガイドラインなどではないところで、問題が発生しているというところです。
7月下旬、福岡県中間市で起きた園バス内に園児を取り残し、熱中症で死亡させてしまった事例もまさに法律やガイドラインではないところで問題が発生しています。
園児の人数確認。園バスの運行。熱中症対策という3つの側面が中間市の事故にはあるのですが、この3点には、厚労省や内閣府が定めたガイドラインや基準のようなものはありません。
まさしく、園を運営する法人や園長、現場の職員に対策がゆだねられています。
このような部分は、どの業界にもあると考えられるのですが、そのすべてにガイドラインや行政が定めた基準のようなものは必要なのでしょうか。
私個人としては、必要ないと考えています。そのような部分に対しては、現場の人間が毎日、穴を発見し、創意工夫し、改善していけばいいのです。
しかしながら、そのようなことができない人間の集合体が保育施設なのであれば、ルールでがんじがらめにすべきでしょう。
できない人間の犠牲になるのは、いつも罪のない子どもなのですから。
私はそのような保育の事故現場で働き始めて19年目です。また、今年もバスの取り残し。熱中症による死亡、という過去に起きたことがある原因で園児がなくなりました。
いい加減、施設側も親側も安全・安心なのは、当たり前。という正しくない前提は捨て去るべきではないでしょうか。
もう少し、安心・安全に時間とお金をかけられるような保育制度の設計にしてもいいのではないでしょうか。
事故が起きてから、「こんな園なら預けなかった」なんて言っても、亡くなった命は戻ってきません。
みなさん。いい加減、事故から学ぶ謙虚な姿勢を身に着けませんか。
しかし、今回の事故も風化します。
風化するまえに、事故の最前線で働く人間として、ご忠告申し上げました。
未熟な園運営のせいで、大切な命を犠牲にした園児のご冥福をお祈り申し上げます。