すべてのお客様がVIP②
前回のブログ「すべてのお客様がVIP①」の続きをお話ししたいと思います。
10年前の東日本大震災の時、ディズニーにはランドとシーを合わせて7万人ものゲストがいました。その当時、7万人ものゲストを救ったのは、魔法でもなくキャラクターでもなく、まぎれもないキャストの方々だったのです。ディズニーでは日常的に防災訓練が行われています。
災害において、「判断力」というものはとても重要です。ここには、想像だけではなく実際に体験してみないとわからないことが多く存在します。特に大規模な災害は日常的に起こることではないため、数回程度訓練しただけでは実際に災害に遭ったときに行動できるとは限りません。ディズニーでは「震度6、来場者数10万人」を想定した防災訓練を年間180回も行っています。つまり、東日本大震災はディズニーのマニュアルでは、「想定内」だったのです。
一般的に防災訓練は、「災害に対してどう対応し、どう避難するか」という点のみで考えられがちです。しかしディズニーの防災は、それだけではなく、安全を守るのはもちろんのこと、精神面にも十分な配慮をされています。
当時、売り物であるぬいぐるみを防災頭巾としてゲストへ配布していました。また、危険なシャンデリアからゲストを遠ざけ、キャスト自らがシャンデリアの下に立っていました。さらに、防災食として、販売しているお土産を配布していました。
これらの行動は、すべて咄嗟にできるものでしょうか。普段の防災訓練から「店内のものは緊急時には防災目的に使用してよい」という指導をされていたためにできた行動だと思います。また、キャストの方々は自分たちも被災者でありながら、決して恐怖を表に出すことはありませんでした。
また、当時液状化が起こった浦安市は、表の歩道の安全が確保できなかったため、ディズニーの裏側を避難通路にもしました。「夢の国」というコンセプトを掲げていても、ゲストの安全には代えられないというさらにブレないコンセプトがあるのです。
防災対策のマニュアルや訓練はとても大切です。そしてそれ以上に大切なのは、防災についての知識を随時アップデートし、それを日頃から末端まで職員全員に意識として行きわたらせることが何より大切です。それができて初めて、生きた防災訓練になるのだと思います。