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安全はコストがかかるもの

安全はコストがかかるもの

 大学生ら15人が死亡した長野県軽井沢町のスキーバス事故を受け、国土交通省は、貸し切りバス会社を対象に、事業認可の更新制度を導入する方針を固めた。更新期間は5年程度を想定し、その都度、安全管理体制を確認して更新の可否を判断する。20日に開催する再発防止策の検討委員会で方針を示す。

 貸し切りバス会社の参入をめぐっては、2000年の規制緩和で免許制から許可制に移行。会社数は緩和前の2倍の約4500社に増えたが、各地の運輸局の態勢が追いつかず、「事故防止のためには監査が不十分」との指摘が出ていた。

 更新制度を導入した場合、国交省は事業認可の更新を審査する際、その会社が安全運行に必要な経済的負担を担える財務状況かどうかを主に確認する。安全管理にどの程度のコストをかけるのかを示す計画書作成を会社に義務づける。

 軽井沢町で事故を起こしたバス会社をめぐっては、ずさんな安全管理が問題化したことから、国交省は一定期間ごとにバス会社の経営実態を把握する必要があると判断した。(毎日新聞 2016年5月20日)

 事故予防や安全にかかる経済的負担を「リスクコスト」といいます。どのような事業でも営んでいく過程で、リスクが生じます。それを回避したり、軽減したり、転嫁するためには、リスクコストを捻出しなければなりません。でも、リスクコストは売上に貢献しませんから、企業が安定期に入ると、このリスクコストをカットし、利益幅を拡大させることがしばしばあります。

 事業を安定的に展開していくには、まず、万が一のことも想定し、それに見合ったリスクコストを計算し、どのようにして確保するのかも考えなければなりません。売上に貢献しないからといって、リスクコストをカットするのは本末転倒なのです。

 さて、事例は貸し切りバス業界の話ですが、この対策は大いに評価されるべきものだと思います。一日も早く実施して欲しいものです。そして、この対策こそ、保育業界に必要な考え方だとわれわれは強く思います。

 保育施設に関する監査のうち、施設の安全に関するものは通常監査と別にし、専門知識を持った監査官が定期的(3年に1度でも、5年に1度でもいいと思います)に安全監査を実施するべきだと考えます。そして、それにパスできなかったところは認可取り消しにするくらいの効力を持たせるべきだと思います。

 バス業界は、軽井沢町で起きた15名が死亡する事故により、新たな安全対策を構築し、実施しようとしています。保育業界は、ここ10年間で100名以上の園児が園内で死亡しています。これを真摯に受け止め、もう少し効果的かつ厳格な安全指導を行えるように行政は考えるべきではないでしょうか。

2016.06.03