事故・トラブル最前線

事故・トラブル最前線これからの時代の園経営や
危機管理の在り方を専門家が語る

最近気になること

保育士の給料は上がるの?

保育士の給料は上がるの?

 保育大手が保育士の賃金を大幅に引き上げる。ポピンズは関東の正社員の給与を平均15%引き上げた。最大手のJPホールディングスは全体で平均4%上げる。保育士不足が深刻ななか、人材確保につなげる。政府は待機児童の解消に向け保育士の給与を2%引き上げるよう促す方針だが、保育サービスの維持・拡大のため、これに先駆けて大幅な増額に踏み切る。(2016.6.5 日経電子版)

 保育の担い手は、行政、社会福祉法人、株式会社、NPO法人など、多様化しています。どの担い手にとっても保育士の処遇改善、なかでも給与の増額は緊急の共通課題でしょう。そのなかで、株式会社の一部が先陣を切って給与の引き上げを表明し、実施しました。このことで、潜在保育士やこれから保育士になろうと考えている方々がどのように動くのかということには、大変興味があります。

 ここで問題なのが、保育の担い手によって、給与の上げ方の方法論が異なるということです。行政、いわゆる公務員は年功序列型賃金ですので、正規職員であれば、年次に従い昇給もする仕組みです。社会福祉法人は保育に係る運営費によって保育士の給与も決まってくるので、運営費の積み増しを国がしてくれない限りは、劇的な給与額の改善をすることは難しいでしょう。これに対し株式会社は、特に本業が他にある株式会社は、保育部門が赤字になっても良いということを前提にすれば、自由に保育士の給与を上げることができます。

 しかしながら、職員の処遇改善は給与面だけではありません。どんなに給与が高くても働きたくない職場もあります。たとえば、職場の雰囲気が悪い。対人関係で悩むことが多い。休暇など自由な時間が取れない。仕事に対するやりがいを感じない。などです。社会福祉法人の方々は、給与面以外の処遇改善を必死に考えるべきだと思います。このことは、現場の保育士の問題でもあります。

 外から入ってくる新しい保育士たちが「この保育園は働きやすい」「この保育園が職場で良かった」という環境を、今いる保育士たちが作ることによって、自分たちの労働環境が改善されるのです。一緒に働いてくれる保育士が増えれば、休暇もとりやすくなりますし、離職率が下がれば継続年数が上がり、保育士の能力も向上し、できることが増えます。つまり、保育の幅も広がり、良い意味で楽もできます。

 労働環境とは、与えられるものではなく、自分たちで作り上げていくものだと考えてください。自分のために目の前にある環境を変えてみてはいかがでしょうか。

2016.06.17