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「クレーマー」に勝訴 業務妨害を認定 大阪地裁

「クレーマー」に勝訴 業務妨害を認定 大阪地裁

 職員への暴言や膨大な数の情報公開請求などを繰り返し、大阪市住吉区役所の業務に支障をきたしたとして、大阪市が大阪府内在住の50代男性に損害賠償などを求めた訴訟で、大阪地裁が威圧的な要求の禁止や賠償金80万円の支払いを男性に命じる判決を出していたことが分かった。住民側の悪質な要求について自治体側の「業務妨害」との主張を認め、賠償を認めた判決は極めて異例という。

 判決は6月15日付。大阪市や判決によると、男性は住吉区に住んでいた2009年ごろ、市の不適正な資金管理の発覚を機に区役所に頻繁に電話をかけ、度々訪問して職員に応対を迫り、執拗に情報公開請求をするようになった。複数の職員に「お前には能力がないから辞めてしまえ」「バカ」などの暴言を吐き、女性職員の容姿を侮辱する発言も繰り返した。対応には平均1時間以上の時間を取られ、体調不良を訴える職員も出た。

 市は業務に著しい支障が出ているとして2012年11月、面談強要禁止などを求めて大阪地裁に仮処分の命令を申し立てた。地裁は同12月の決定で申し立てを認めたが、男性は区役所への電話や公開請求をやめなかった。

 市は2014年2月、「民法が禁じた権利の乱用に当たる」として、業務を妨害する行為の差し止めと約200万円の損害賠償を求めて提訴。公開請求の乱用は線引きが難しいため、市は審理の途中で面談の強要禁止などに争点を絞った。地裁は今年6月、市側の実害を認めて男性に80万円の賠償などを命じた。判決は男性が2012年3~12月に53件の公開請求をし、漠然とした内容の請求もあったと認定。また、同年4~8月に電話95件(23時間分)をかけたとした。男性は控訴せず、地裁判決が確定した。

 判決について市行政課は「市民の情報公開請求の権利はあるが、職員の業務にも支障が出ていたため、やむを得ず提訴に踏み切らざるを得なかった」と話している。弁護士は「行政側が悪質な要求をする住民を提訴し、判決で賠償命令が出るのは珍しい。自治体は我慢し続けず、毅然とした対応をしていくべきだ」と話している。(2016年7月19日 毎日新聞)

 この判決は、保育施設にとっても良い判決になると思い、今回のブログでピックアップいたしました。最近、保育施設に苦情を申し立てる保護者の中で、行政に対しても強烈な苦情をぶつける保護者も出てきています。その方々は、保育に関わる行政の担当者を無能呼ばわりし、罵倒しています。

 もちろん、それと同じようなことを保育現場の職員にもするので、1人の保護者のために次々と職員が辞職し、ただでさえ人手不足の現場がさらに人手不足が深刻化し、保育の質どころの話ではなくなる。という保育施設は少なくないのです。

 そういった方々には、事例の中で弁護士の方がコメントしているように、現場で我慢し続けないで、毅然とした対応を心がけるべきだと私も考えます。しかしながら、すべての苦情主を訴えてたとしても時間と費用がムダにかかってしまいます。そのため、できないことは「できない」。無理なことは「無理」。とはっきり伝えるようにすることが重要です。

 それと並行して、対応者の心を守るために苦情への対応の仕方(クレームマネジメント)を事前に研修などで備えておくことも大切です。苦情の形が進化するとともに、苦情対応の形も進化しなければなりません。通り一遍の苦情対応では対応できないのが現状なのです。

2016.08.12