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ポケモンGOの出現で試されることになる個人の危機管理能力

ポケモンGOの出現で試されることになる個人の危機管理能力

 スマートフォン向け人気ゲーム「ポケモンGO(ゴー)」を一緒にするため女子高生を深夜に連れ出したとして、京都府警下京署は26日、府青少年健全育成条例違反(深夜外出の制限)の疑いで、京都市西京区の飲食店アルバイトの女性(21)を摘発したと発表した。容疑を認めており、同署は近日、女性を書類送検する予定。

 同署によると、女性は25日午前3時20分ごろ、京都市下京区の歩道上で、高校3年の女子高生(17)が18歳未満と知りながら、保護者の同意なく、深夜に連れ回していたという。

 女性と女子高生は、同じ飲食店でアルバイト勤務する同僚で、24日に勤務中、「京都駅周辺に珍しいポケモンがいるから行こう」などと話し合い、勤務後の25日午前0時半ごろ、京都市西京区のファストフード店で待ち合わせた後、ミニバイクに乗って京都駅に向かったという。

 同署によると、パトロール中の署員が、京都駅西側の交差点付近で停車したミニバイクにまたがり、スマホを使用していた2人を発見し、職務質問をしたことで発覚した。

 女性らは、「ポケモンを探すため、西京極と梅小路に寄った後、京都駅に来た」などと話していたという。(2016年7月26日 産経新聞)

 ポケモンGOが全米で大ブームを引き起こし、逆輸入するような形で日本にも上陸し、すでに大ブームになっています。

 それにともなって、各メディアは、ポケモンGOは事故を増大させる。トラブルを増大させる。というリスクの部分に焦点をあてた報道に偏っています。リスクの裏には必ずリターンがあるので、コミュニケーションツールとして優れている。運動不足の解消にも役立つ。というようなリターンもあると思います。

 ポケモンGOは、社会に対してメリットとデメリットのどちらの面が大きいのかという議論も大切なのですが、個人の危機管理能力が問われているということの方が重要だと思います。

 危機管理能力というと難しい感じがしますが、状況を判別する能力や大切なことを判断する能力です。たとえば、事例のようなケースは簡単に犯罪に応用されると考えられます。事例の21歳女性が男性になっただけで、女子高生に対する性犯罪のきっかけにもなりますし、17歳の女子高生が9歳女児になると誘拐事件にもなります。

 犯罪者の工夫による犯罪を未然に防ぐことは不可能です。したがって、被害者にならないような対策を講じることが犯罪に巻き込まれないキモになります。問題は、そのような能力がポケモンGOに熱中する人たちに備わっているかどうかなのです。

 警察署に「ポケモンがいるという情報が入ったので、今から捕まえに行っても良いか」という問い合わせの電話も入っているといいますし、不法侵入で通報された人も少なくないそうです。

 熱中するあまりに、リアルとバーチャルの区別がつかなくなる人たちが増えているようです。テレビドラマの役柄の設定に対して現実とかけ離れているとクレームの電話をテレビ局に入れたり、SNS上のことはすべて事実だと疑っていなかったりする人が増えているのです。

 「どうせ作り物だから」とか、「ネット上の情報だから」というような見極めができていないのです。これは個人の危機管理能力が非常に低下しているというか、麻痺しているのです。

 今日、東京では都知事選挙です。主要な候補者はすべて「待機児童の解消」を政策として掲げています。それに対して、「舛添前都知事が2年半かけてできなかったことが、なぜ、あなたには早急にできるのですか?具体的に説明してください」というマスコミはいません。また、それを演説で詳細に説明している候補者もいません。

 おそらく、誰が当選しても、公園に保育施設設置でもめている練馬区に新都知事として行き、区長と一緒に住民の説得にあたるということはないでしょう。それは、私どもが都内の保育施設に関して住民側と施設側が話し合う場に、区議すら姿を現したことがないので、容易に想像できます。

 民主党が政権を取ったとき、「年金問題は私に任せていただければ半年で解決してみせます」と言って、任せてみたら何もできず、まだ、現職の代議士を続けている恥を知らない議員もいますが、それと同じなのです。

 「保育所整備は、区の仕事だから頭ごなしにはできない」というようなことを誰がなっても言うのでしょう。そして、待機児童の問題は解消されないまま時間は過ぎ、今度は、東京都に大量の待機老人が出現することになるのです。

 私は、そのような選挙前に言ったことと、選挙後にやることが違っている候補者を非難しているわけではありません。なってみたら、思っていたことと違ったという事情も理解できます。だからこそ、何事も見分けられる目を個人に持っていただきたいと思い、それこそが危機管理能力ではないかと考えています。

 ゲームや政治だけに関わらず、仕事、結婚相手、転職、出産、進学などさまざまな場で、状況判断能力が試されます。ポケモンを追いかけていて、楽しんでいるうちに気がついたら人の家の庭だったというのは、あまりにも危機管理能力が稚拙だと思います。

 私には、「君には町や周囲の人の状況を判断しながら、誰にも迷惑かけずに、僕を捕まえられるかな」というピカチューからの挑戦状にポケモンGOは見えます。この機会に楽しみながら、自分の危機管理能力も磨いてみてください。

2016.07.31