訴訟の季節 1
事例① すし久兵衛 オークラを提訴
ホテルオークラ東京の建て替えに伴って店舗がメインエリアから外されたのは「格落ち」だとして、高級すし店「久兵衛」がオークラ側に1千万円の損害賠償などを求めて東京地裁に提訴していたことが13日、わかった。12日に第1回口頭弁論があり、オークラ側は請求棄却を求めた。(2018年11月14日 共同通信)
事例② 内田前監督 解雇無効求め提訴
悪質な反則を指示したとして懲戒解雇された日大アメフト部の内田前監督が、解雇は不当で無効だとして、地位確認などを求めて東京地裁に提訴していたことが14日、わかった。15日に第1回口頭弁論が開かれる。(2018年11月14日 共同通信)
私も仕事柄、訴訟の場面に出くわすことがあります。みなさんは、訴訟(裁判)についてどういうイメージをお持ちですか?いきなり、訴状(お前さんを訴えたので、裁判所に出てこいや!というお手紙)が来ると思いますか。
実は、訴訟の前には、だいたいの場合、示談(話し合いによる解決)するための交渉があります。この交渉は、本人か代理人(弁護士資格をお持ちの方)しか行えません。つまり、事例の①も②も本人か代理人が示談交渉をしたけれども、交渉決裂で裁判に発展したと考えるのが自然です。
もし、本当にそうだとした場合、「オークラさんと久兵衛さん」も「日大さんと内田さん」も話し合ったけど、裁判で決着をつけようぜ!ということでもの別れしたことになります。そして、裁判になれば、周知のことになることも承知の上で、もの別れしたことになります。
そうした場合、オークラさんと久兵衛さんと日大さんは、自分たちのイメージに傷がつくことを承知で、訴訟に踏み切ったのです。これは私の感覚ですが、久兵衛さんのお店のブランドや格は、たかだた1000万円ではないと思いますし、日大に内田さんがもう一度、現場に戻せ!と言っているのは、これからの受験シーズン本格化を考えると、相当なダメージが日大側に加わると思います。
つまり、示談交渉の段階で、久兵衛さんは、お金には変えがたい屈辱をオークラさんから与えられたのではないでしょうか。一方、日大さんは、内田さんをどうにかして引き下がらせる条件を出さなければならなかったのに、出せなかったのではないでしょうか。
これは、保護者対応や事故対応にも通じるところがあると思います。訴訟とは、相手との合意の形成ができなかったあとに来る手続きです。訴訟を避けることは可能なのです。しかし、それには、相手の気持ちや立場を推し量る人間力が必要なのです。