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虐待【死亡事故より重たい刑事罰】

虐待【死亡事故より重たい刑事罰】

 本日は昨今、マスコミ報道の多い虐待について刑事罰という側面から分析いたします。虐待というものが社会的にどのように処罰されているのかを見ていきましょう。

 まず、一般的な刑事罰についてご説明いたします。刑事罰には、刑務所などで身柄を拘束される懲役刑(または禁錮刑)とお金を支払う罰金刑があります。身柄拘束されてしまう懲役刑は罰金刑よりも重たい刑罰です。そして、刑法では「5年以下の懲役または100万円以下の罰金に処する。」というように懲役刑と罰金刑を選択できるようにしていることが多いです。このように懲役刑と罰金刑を選択できる刑罰を選択刑といいます。選択刑の場合、懲役刑ではなく罰金刑も選択できるため、懲役刑よりも軽い刑罰です。だだし、懲役刑も選択できるため罰金刑より重い刑罰です。つまり、重い刑罰を順番に並べると、懲役刑→選択刑→罰金刑という順番になります。

 虐待は肉体的虐待、精神的虐待、性的虐待、ネグレクトの4種類に分類されます。そして、肉体的虐待は傷害罪(刑法204条、15年以下の懲役または50万円以下の罰金)、性的虐待は強制わいせつ罪(刑法176条、6ヶ月以上10年以下)、精神的虐待は強要罪(刑法223条、3年以下の懲役)、ネグレクトは保護責任者遺棄罪(刑法217条、1年以下の懲役)の罪が成立する可能性があります。対して、園における職員が園児から目を離していた等の職員の不注意による園児の死亡事故は業務上過失致死傷罪(刑法211条5年以下の懲役または100万円以下の罰金)が成立する可能性があります。

 これらを上記重い刑罰順でみると、園で職員が園児から目を離していた等の職員の不注意による死亡事故の業務上過失致死傷罪が1番軽い罪になります。それはなぜかというと、虐待はわざと犯す罪であるのに対して、職員の不注意による死亡事故は職員がわざと犯す罪ではないからです。このわざと犯す罪の事を刑法上故意犯といいます。不注意で事故が起きてしまったような場合は過失犯といいます。故意犯は過失犯より重く処罰されるのです。

 実際の裁判例を見てみましょう、職員が園児から目を離しているときに園児がプールに溺れてしまい、その後死亡した事例では、職員に過失犯である業務上過失致死罪が成立し、目を離した職員は罰金50万円の刑罰を受けています(2014年3月24日)。対して、職員が園児に性的虐待をした事例では、職員に故意犯である強制わいせつ罪が成立し、性的虐待をした職員は懲役9年の刑罰を受けています(2018年10月12日)。

 このように虐待は、社会的に重く処罰されます。そのため、虐待対策が後手に回る前に虐待について考えてみてください。弊社におきましても、虐待の研修、虐待マニュアル等ご準備しておりますので、何なりとお問い合わせください。

2019.04.03