吉本騒動で考える その4
吉本興業の岡本社長が会見した7月22日の翌日、23日にお笑い芸人のたむらけんじさんがツイッターを更新し、会見に出席した弁護士について「吉本の無能顧問弁護士に芸人達が必死に稼いできたお金が払われていると思ったら寝られ経んわ!」と激怒していました。
これはたむらさんの感情としては、「そう思いますよね。大金支払ってあの結果ですからね。」と理解することはできます。でも、記者会見の失敗を弁護士のせいにするのは、根本的に間違っているといえます。このシリーズ最後のテーマは「その弁護士の使い方は間違っていますよ」です。
そもそも弁護士とは、法律の専門家です。ということは、法律の解釈や裁判になったときの注意点について専門的なアドバイスを受けたり、代理人として手続きをしていただくのが仕事です。少なくとも記者会見のプロデュースを専門的に行う仕事ではありません。つまり、弁護士は万能ではないのです。
なぜか日本には、それが高学歴主義からくるものなのかわかりませんが、「弁護士万能神話」みたいなものが、未だに定着しています。でも、実際には専門性が高い個人事業主にすぎません。単なる一専門職種の方々と理解したうえでお付き合いしたほうが良い結果が出ると思います。
記者会見とは、ショーだと私どもは考えています。それゆえに、今回の吉本興業の最大の失敗は、楽しいショーを世の中に提供するエンターテイメント会社が、自分たちにとってもっとも大切なショーで失敗した。ということだとわれわれは考えています。
記者会見でもっとも大切なことは、会社の信用が傷つくのを少しでも和らげることです。その点で最重要になるのは、記者会見を開いた以上、記者の方々が聞いてきたことには、「正確に」答えることです。聞かれたことに答えていないと、相手は「はぐらかされている」と思いますし、とんちんかんなことを答えていると、「理解力が低い」と思われ、相手が好きなように書きます。
園でも記者会見まではないにしても、重大事故や職員が園児に虐待したなどのトラブルが発生したときには、保護者説明会の必要があります。そのようなときに失敗しない注意点は、「肉を切らせて骨を断つ」ということです。この言葉の意味は、自分自身も傷つく覚悟をして、相手により大きな打撃を与えることです。
事故やトラブルが起こった以上、園も無傷で終わらせることはできません。つまり、ある程度は自分たちも傷つく覚悟をして、相手にダメージを与えるのではなくて、大切なものを守る。ということです。
私たちは仕事柄、事故現場で無傷でこの難局を乗り切りたいという方々をよく目にしますが、それは無理です。ダメージを最小限にして、大切なものを守るという基本戦略で危機対応を始めるのが大切だと思います。