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4月を迎える前に知っておきたい金魚鉢理論

4月を迎える前に知っておきたい金魚鉢理論

 世間は新型コロナウイルスの話題でもちきりですが、時間は新型コロナウイルスに関係なく過ぎて行きます。東京では3月14日に桜の開花が観測されました。 

 4月になれば、新入職員を迎える園も多いのではないでしょうか?はじめて後輩ができる職員や、長年新人教育にあたっている職員もいらっしゃると思います。新入職員を園で迎え入れる場合、数多くの園のルールや決まりごとをお伝えしなければなりません。つまり、先輩の職員は、新入職員を教育していかなければなりません。

 ただ、本当に新入職員は教育されるだけの対象なのでしょうか?新入職員から学べることはないのでしょうか?私は新入職員からしか学べないことがあると思います。新入職員を迎え入れる前に是非、先輩になる職員にお伝えしたい金魚鉢理論のお話をいたします。

 金魚鉢の中に金魚が10匹いるとします。10匹の金魚が金魚鉢の一方に集まっている時に、金魚鉢の真ん中に透明な板を入れます。10匹の金魚は板があるため板の反対側に移動することはできません。そのため、10匹の金魚はなぜかわからないが板の向こう側には行けないことに気がつきます。そして、今行動できる範囲で行動するようになります。

 数日して金魚鉢の中の板を抜いて、10匹の金魚が金魚鉢全体を移動できるようにしても、10匹の金魚は、今まで移動できなかった板の反対側には移動せず、板が入れられていた時に行動できた範囲でしか行動しません。10匹の金魚は自分たちで勝手に自分の行動範囲を決めてしまっているのです。

 この10匹の金魚を板が入れられていた時移動できなかった範囲に、移動させるためにはどうしたらいいのでしょうか?答えは、新しい1匹の金魚を金魚鉢に入れれば良いのです。この新しい金魚ははじめから板の存在など知らないため、何の躊躇もなく金魚鉢全域を移動します。その行動を見た10匹の金魚も新しい1匹の金魚につられて金魚鉢全域を移動するようになります。

 この金魚鉢をみなさまの園だと考えてください。みなさまは知らず知らずの内に園の雰囲気や慣れなどで自分の行動や思考を制限してしまっている部分が必ずあります。制限してしまっている部分に安全に関する意識も含まれます。新しい1匹の金魚は新入職員です。新入職員の発言はみなさまの行動や思考の制限を排除するきっかけになるものです。たしかに、見当違いの発言も多いでしょうが、何を新人が言っているの!と一刀両断にするのではなく、耳を傾け、園をよりよくするきっかけにしていただければと思います。

2020.03.18