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クレーム大国日本

クレーム大国日本

 みなさんも、この新型コロナウイルス対策の期間中、いろいろなところでマスクを手配したと思います。われわれの会社でもいたるところで探しました。

 5月初旬は、50枚4000円前後だったマスクも、今は50枚2000円前後に落ち着いています。本日はそのマスクを通じてクレーム大国日本について考えたいと思います。

 私どもの会社では、先日、ある会社さんから「ぜひ保育業界でお役立てください」ということで、マスクを1000枚程いただきました。そのお話をある保育団体の方にお話したところ、「今でも、まだまだ足りないところもあると思いますので、ぜひ、いただきたい」というありがたいお返事をいただきました。

 その団体さんに所属する全保育施設にマスクを送付するには、数が足りなかったので、50枚入りの箱をそのまま送るわけにはいきませんでした。

 そこで、私どもアイギスのスタッフ総出で、箱からマスクを出し、さらにビニール袋から出し、それをいくつかに分け、別のビニール袋に戻すという作業を行うことにしました。

 その作業中にいろいろなことに気づきました。このマスクは中国で生産され、中国から日本に送られたものでした。50枚入りの箱にマスクが50枚入っていない。ところどころに砂の粒のようなものが付着したものや、シミがついたものがある。髪の毛が入っている。郵送中にマスクの入った箱が押しつぶされ、中身も押しつぶされている。というマイナスの状態にたくさん気づき、それらを取り除くのも結構な時間と神経を使いました。

 ここで、本日のタイトルである「クレーム大国日本」につながるのですが、日本はきちんとしすぎているからクレームが多いのだということです。

 消費者側は、いつもモノやサービスの洪水の中で生活しているから、何でもいくつでも選びたい放題。生産者側は、その供給過多の中で自社製品を選んで買っていただかなければならないので、より良いものをきちんと作る。

 それが、今回のマスクのように需要過多になると、マスクの箱にマスクが入っていれば、多少、数がそろっていなくても、汚れていても、「あーよかった。マスクが手に入った」ということになります。手に入ったことが満足で、クレームは出にくくなるわけです。

 つまり、日本がクレーム大国なのは、豊かさの裏返しなのです。

 しかし、アフターコロナもこの状況が続くとは限りません。おそらく、格差は大きく、早く開いていくでしょう。豊かさは薄れ、困窮する人たちも増えていくと予想されます。そのような環境下で、少しでも現状に踏みとどまるためには、リスクを取るしかないと思います。

 まずは、リスクを選択し、取り方を考え、仕組みを作り、リスクの裏にあるリターンを享受するしかないと思います。みなさんは、今、コロナ対策だけに心をくだいていませんか。足も頭も止まっていませんか。

 今日からは、県境を越えた移動がOKになります。コロナとの共存の始まりです。ワクチンや治療薬ができたら、コロナも終わります。そのとき、また、ゼロからのスタートだと、後塵を拝することになるのではないでしょうか。

 危機の最中だからこそ、リスクを取ってください。

2020.06.19