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言葉の大切さ

言葉の大切さ

 新型コロナウイルス対策として三密を避けることは日本社会に浸透してきています。三密とは密閉、密集、密接です。集団保育をしている保育施設においては密集、密接を避けることは困難なことだと思いますが、商業施設などでは三密対策を取り入れています。

 そのうちの1つに喫煙所の閉鎖があります。喫煙所は三密すべてがそろっている場所なので喫煙所の閉鎖もやむを得ないと思います。そんな中で、喫煙所の人数制限をして密集を防ぎ、喫煙所での喫煙者の立位置を指定して密接を防ぎながら喫煙所を解放している施設もあります。施設としてできる範囲の対策をし、タバコを吸う利用者を満足させようという取組は評価できます。

 先日ある喫煙所の入り口で見かけたのが「2人以上の入室禁止」という文言です。喫煙所には灰皿が2つ準備されていて、人の立居地も2箇所マークされています。この状況で、みなさまは何人が喫煙所に入れると思いますか?

 「2人以上の入室禁止」を言葉通りに受け取ると、喫煙所には1人しか入れません。「以上」の意味は「それを含みその上の範囲」です。つまり、2人以上とは2人を含みそれ以上の人数という意味になります。そのため、「2人以上の入室禁止」とは2人から入室禁止という意味になるわけです。

 ただ、灰皿が2つある点や人の立居地が2箇所マークされていることから考えると、この喫煙所は2人までの入室は想定していると言えます。そうだとすると、正しい表現は「2人を超えての入室禁止」または「3人以上の入室禁止」です。

 何を細かいこと言っているのかと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、くだらない問題とは言い切れません。仮に喫煙所に3人の利用者が入っていた場合に施設側が「最後に入った方、しばらく外でお待ちください」と声をかけた場合、声をかけられた利用者から「2人以上入室禁止と書いてあるのだから、私の前に入った人にはなぜ注意しないの?」と言われてしまった場合、施設側は理論上、再反論は出来なくなってしまいます。

 とはいえ喫煙所での一場面の出来事ですから、人命に関わるような事態はなかなか想定できません。しかし、みなさまの園のマニュアルで同じミスがあった場合はどうでしょうか?救急救命の一時を争う際に、言葉を間違えて記載されていたら尊い命を失う可能性があります。また、事故防止のマニュアルの中で、マニュアル作成者の伝えたいことと、職員の理解が異なっていたら、園児の安全は守れません。

 園のマニュアルの中に間違っている言葉がないか、曖昧な言葉はないかのチェックをお忘れなきようにしてください。必要であれば弊社サービスをご利用ください。

2020.07.29